去る3月5日、パシフィコ横浜にて「未来を創造する企業づくりへの挑戦」と題して第45回中小企業問題全国研究集会が開催されました。
来賓に神奈川県知事を迎え、18分科会全体で1,200名の中小企業者が集まりました。私は、「幸せの見える日本経済の自主的・平和的な繁栄をめざして~中小企業者として平和問題をどう考えるか~」と題する第2分科会に参加しました。
東京弁護士会の憲法センターの副委員長として都内や東京近郊の学校に出向いて憲法の大切さを知ってもらう活動をしているものの、経済人と平和問題について語り合った経験は余りありませんでしたので、どのような分科会になるのか興味がありました。
基調報告は、香川同友会相談役の三宅昭二氏。年商54億5000万円の太陽光発電システムの販売等を行っている香川県の有力企業の会長さんです。
今年80歳になる三宅氏は、敗戦時10歳。神の国から民主主義の国へ価値観が根底からひっくり返る少年時代を経験、戦後の中小企業が金融機関にまともに相手をしてもらえない時期を自主・民主・連帯で乗り切った経験を語りながら、「平和の傍観者でなく、主体者として生きる」を淡々とした口調で話されました。
およそデモなどには参加したことがないなどと言いつつ、頻繁に社内報を発行して社員と日常的に平和問題を語りあえる社風を築き、平和の基盤は互いの国を良く知ることにあるとの信念でこの10年間、かのアジア太平洋戦争期日本が迷惑をかけた国々で社員と一緒になって小学校づくりの経済支援を行ってきたこと、戦争の歴史の証言を残しておかなければならないと自治体と一緒になって証言集の発行に情熱を傾けていることなどを、先日お亡くなりになったドイツのワイツゼッカー大統領の「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」との言葉も引きながら語られました。
経済活動と平和を守る活動をさりげなく両立させているところは、素晴らしいと思います。
次いで、三宅氏の報告を受けて、6つのグループでバズセッションを始めました。テーマは①中小企業家として「平和の主体者となる」とはどういうことなのか、またどうすればよいのか②日本経済の自主的な平和的繁栄はどうあるべきか、それは何をもって担保されるのかの二つでした。
平和なくして中小企業の繁栄はありえないとする点で参加者に異論はないものの、「平和の主体者となる」ことについては、当然のことながら、防衛力を増強する方向で獲得するものと捉える方から、戦争をしない国づくりの方向で捉える方までヴァリエーションがありました。前者の考え方が積極的平和主義、後者の考え方が護憲派と大きく括ることが出来るでしょう。この両者の考え方、そう簡単に相互理解を進められるものではありませんが、そもそも、このような問題で討論をする場自体が誠に少ないことが問題だと思われます。
このような状況下、中小企業家同友会が、このようなテーマで研究集会を催すことは大いに評価できるのではないでしょうか。おりしも昨年7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定を踏まえた安保法制の大改正が行われようとしています。ろくろく国民的議論がなされないまま、このような大改正が進められては、日本の将来にとって取り返しのつかないことにもなりかねません。
参加者の中から、昨年7月15日付の中小企業家同友会全国協議会鋤柄会長の「集団的自衛権行使容認は国民的議論が必要」とする会長談話を、第2分科会の決議としたいとの緊急動議がだされ、満場一致で採択されました。
「ビジネスに政治と宗教は禁句」との風潮は根強いものがありますが、中小企業家同友会の「中小企業は平和な社会でこそ繁栄できる」との運動理念に照らしても、平和問題を議論し続けることは大切なことではないでしょうか。