目黒不動の境内は、仁王門・前不動堂・勢至堂等が建つ平地と大本堂の建つ高台の2段構造です。
平地の向かって左側、小さな階段を登ったところに、江戸中期創建と見られる勢至堂が佇んでいます。
その右には、同じころ創建された前不動堂があります。
何れも江戸時代の仏堂建築の姿を現代に伝えている貴重な建物とのことです。
前不動堂の右側では、独鈷の滝が小さな飛沫をあげています。
伝承によれば、円仁が寺地を定めようとして独鈷を投げたところ、その落下地点から霊泉が湧き出し、今に至るまで枯れることがないという。江戸庶民の間では、この滝を浴びると病気が治るとの信仰が広まっていたと言われています。
平地に広がる伽藍を一巡りしてから、いよいよ大本堂のある高台を目指します。高台への道は、急峻な男坂となだらかな女坂に分かれています。
男坂の左側に、家光の愛鷹が止まった件の松がありました。家光により鷹居の松と命名された松でしたが、現在はその跡地に、何代目か後のものと言われている松が大振りの立派な枝を広げています。
坂を登り切った先に大本堂が聳えています。
入母屋造に千鳥破風を持つ大規模な仏堂で、昭和56年(1981年)に再建されました。
大本堂の背後に回ると、露座に大日如来様が鎮座されています。
この如来様、刻銘から天和3年(1683年)、江戸の鋳物師横山半衛門尉正重によって、多数の施主と供養者の寄付を募って造られたと言われています。
元々は堂社の中にいらっしゃったとのこと。
自らは風雨にさらされることも厭わず、庶民の願いを聞き届けようとされているのでしょうか。